書籍
時代を喰らった顔(井上和博 中央公論新社 ISBN:4120032833)★★★★☆
写真週刊誌のカメラマンの著者が、かつて色々な事件や報道で一役話題になった政治家・財界人・知識人の、素顔の写真とエピソードを描いています。
テレビの前ではよそ行きの顔をしてても、以外に人間味にあふれていたりして、政治家も人間だものなぁ、と思うエピソードもあって、興味深かったです。
現代語訳 旅行用心集 (八隅蘆庵 桜井正信監訳 八坂書房 ISBN:4896944801)
★★★★☆
資料本として読みました。内容は、旅の心構え・心がけから、旅先でのトラブル対処法・暦等がありました。
特に乗り物酔いの対処法については、「船に乗るときに、その川の水を一口飲むと船に酔わない。」というおまじないレベルの内容や、「駕籠に酔う人は、駕籠の戸を開けて乗りなさい。」という現代でも通用するものも。
絵を描きたいあなたへ (永沢まこと 講談社 講談社ニューハードカバーシリーズ ISBN:406264049X)
★★★☆☆
本書の大半は著者の体験談ですが、読みやすい文章で描かれています。
具体的な絵の描き方を知りたいと思った人には、期待はずれでしょう。
絵の描き方については、絵を初めて描きたいと思った人は美術系の学校のように陰影で絵を描くのではなく、輪郭を捉えて線で描こうという内容でした。
要するに絵手紙の書き方と同じ方法・心構えです。
最初から理論から勉強をはじめると、絵を描く楽しみが失われてしまい、挫折してしまうとのこと。
猫だましい (河合隼雄 新潮社 ISBN:4103791055)
★★★★☆
雑誌「新潮」(1998年10月号〜1999年10月号)に連載したものをまとめたものです。
猫が登場する小説・民話等を使って、人間の精神・魂について語っています。
河合さんの文章は国語の論説文問題によく出てくるので、読みかたのコツを知っているつもりでしたが、丸々1冊は読んだことはありませんでした。
また7月に河合さんがお亡くなりになったことも後押しとなって、読んでみることにしました。
論説文問題に出てくるような理詰めな文章は、文章の中のごく一部で、章全体では話がうまくまとめられず、最後の章で強引に話をまとめています。
1話完結型の連載をまとめた本なので、文章のテーマをうまく統一しきれなかったのかなぁ。
壁に死体を塗り込める話の元ネタは講談の「鍋島猫騒動」であることを知ったり、本書で紹介されていた「牡猫ムルの人生観」を読んでみたくなったりと、意外に収穫ありでした。
こういう本のことを、教養書っていうんだろうなぁ。
東海道五拾三次 広重 (安藤広重 アート新村)
★★★☆☆
安藤広重は生涯のうちに、東海道五十三次の各宿の風景を描いた「東海道五拾三次之内」を何作も出したそうですが、そのうち一番有名な保永堂版と、行書版・隷書版が収録されています。
右ページには保永堂版が、左に行書版・隷書版があるため、見比べるのに便利でした。
行書版は人間の描写に力を入れており、隷書版はグラデーションに力を入れているようです。
しかし両者とも、保永堂版よりも芸術性が格段に落ちているのがよく分かり、アングル・構図を変えただけのものも多かったです。
オフィスのごみは知っている (鈴木将夫 日本教文社 ISBN:453106383X)
★★☆☆☆
副題・カバー見返しの煽り文・推薦文・冒頭の文章で、書かれている内容が全てバラバラ。
本書の内容はビル清掃の話が中心なのですが、ビル清掃の本だと思って読み進めていくと、脈絡もなく唐突に、環境保護・リサイクルの話や「元気に百歳クラブ」・福祉政策の提案が出てくるので戸惑います。
表紙・出版社を見た瞬間に駄本の雰囲気を感じたのですが、ビル清掃の話の部分に関していえば面白く興味深かったです。
しかし話の構成が不可解でなければ、★4つの評価があげられたのになぁ。
なお、本書は月刊「ビルクリーニング」2002年1月〜12月号に掲載したものに加筆修正を加えたものだそうです。
(初出:はてなダイアリー「Tech² memo」)