きゃらりこ日誌

2018年01月

インターネット / 雑学 / メモ

Podcast制作資料

最近、技術系Podcastが流行っているようなので、以前Podcastを始めたいなぁと思ってたときに調べた情報をメモしておきます。

【制作費】
‣東京の某AMラジオ局の番組制作費は、ギャラが不要な局アナメインの1時間番組なら、5万円/回 程度。
コメンテーターのギャラは、電話出演なら5千〜1万円で、ときにはノーギャラのことも。
ちなみに10年ほど前にブレイクした一発屋芸人の一人喋りのラジオ番組(30分番組 制作局では放送されない裏送り番組 Podcast配信あり)の出演料は1か月で2万円弱、構成作家のギャラは1万円。出演者いわく、ギャラが安すぎる!とのこと。

【音楽】
‣ラジオ局で使われている10〜20秒程度のジングルは、専門のプロダクションに作成を依頼すると10曲で50〜100万円。

‣有料のライセンスフリー音楽は、海外サイトなら1曲で5千〜1万円が相場。
ただしライセンスフリーでも、権利者団体にキューシート(楽曲の使用状況の報告書)の提出が必要な場合がある。
ライセンスがいい感じで緩くて、通販CM・企業PV・学習教材・ナレーション入り店内放送でもよく使われている、Nash Music Library:FREE USE MUSICなら、1曲¥2,160くらい。

‣オリジナルBGMを作成する場合は、あまり有名ではない作曲家で、著作権買い取り、自宅で録音・打ち込み、納期1〜2ヶ月という条件なら、1曲5万円から。
なお、とあるPCアダルトゲームメーカーでは音楽の予算を立てるときに、BGMは買い切りで1曲3万円(大量発注なので単価安め)、歌ものだと1曲50万円を目安にしている(エロゲが8800円でも儲からない理由 - Togetter)。

‣BGMの音量は、控えめすぎるかな?と思うくらいがちょうどいい。
テーマ曲の音量が大きすぎるPodcastも多い。

‣同じコーナー内では曲調・雰囲気が異なるBGMを混在させない。落差が大きいとBGMが変わった瞬間、耳がトークから離れ、曲の方に向いてしまう。

【収録環境】
‣ラジオ番組やCMナレーション収録に使われるスタジオの使用料は、1時間で1万円くらい(ミキサーさん付き)。

‣あとで騒音や反響音を除去するのは困難なので、できるだけ静かで、音が響かない場所で録音する。
床面・壁面が硬いと音が反響しやすいので、カーテンを閉めたり、段ボール箱が積みあがった荷物部屋を使う、絨毯敷きの応接室・畳敷きの部屋を使うことで、反響音を軽減できる。
録音場所の無音時の環境ノイズは、アマチュアなら-60dB以下が理想。
ちなみにプロが使うスタジオなら-120dB以下、NC値はNC -15。

‣収録中にはパソコン・スマホは、できるだけマナーモード・ミュートにしておく。
電話の着信音・パソコンのエラー音・警告音がマイクに乗ると、リスナーが自分のスマホ・パソコンから鳴っていると勘違いさせてしまう。
自宅で収録する場合は、インターホン・固定電話の呼び出し音量も下げておいた方がよい。

‣録音スタジオに集まって、マイクごとにトラックを分けたマルチトラックレコーディングをするが理想。
最初はパソコンにマイクを接続したり、Skypeなどのボイスチャット機能を使って複数人で収録する人が多い。ただし音質に難あり。
各々が自身の声だけを録音し、その音声ファイルを編集担当者に送りつけるという方法をとることで、擬似的に高音質なマルチトラックレコーディングを実現する人もいる(タイミング合わせの合図(誰か1人の声に合わせて、一緒にカウントダウンするなど)を入れておくと、同期作業が楽になる)。
ただし上記の作業は面倒なので、結局はみんなで静かな場所に集まって、ICレコーダで収録する方法に落ち着くことが多い。

‣収録用のファイルフォーマットは、CDと同等のWAVファイル(リニアPCM 2ch 44.1kHz/16bit)にしておくのが無難。音楽収録のように、48kHz/24bit(ハイレゾ)にする必要はない。
ちなみにラジオ局指定の納品フォーマットBWF-J(放送用に拡張が施されたWAVファイル) だと、リニアPCM 2ch 48kHz/16bit。

‣しゃべるスピードは、CMでは10秒間で63音節、50字が目安(民放連「放送基準解説書2014」より)とされている。

‣マイク選びは好みによるが、定番品を選ぶなら街頭インタビュー・記者会見でもよく使われるSure SM-63(全指向性 2万円くらい)か、ボーカル用マイクのSure SM-58(単一指向性 1万円強)。
周囲の騒音がかなり気になるのなら、野球中継のベンチレポーターも使っているSENNHEISER MD431II(超単一指向性 5万円強)。
なお国会中継の民放用マイクは、かつては三研マイクロホン MS-5C(黒くて細長い円筒状のマイク 全指向性)が長らく使われていたが、現在はオーディオテクニカ BP4002(全指向性 3万円弱)を使用。
(会話が綺麗に聞き取れる音で、周りの議員のヤジも拾えて、詰め寄った議員がなぎ倒しても壊れにくいとのこと)
アニメのアフレコ・外国映画の吹替えや、ボーカル・オーケストラの収録で定番のマイクは、NEUMANN U87Ai(30万円弱)。
ちなみに漫才でよく使われている四角いマイクは、SONY C-38B(通称、サンパチ 15万円)。
宅録なら、指向性がきつく感度が低いマイクの方が、余計なノイズを拾いづらい。
リップノイズ避けにはポップガードを使う方法もあるが、選挙演説のようにマイクにガーゼを巻いたり、マイクをおでこ・胸・頬に向けてノイズを避ける方法もある。
記者会見でもよく使われているSure SM-63(銀色・黒色)と、三研マイクロホン MS-5C(左・右端の円筒状のマイク)
〈写真:FNN.jpプライムオンラインより 一部加工〉
落語・漫才や、和楽器の録音でよく使われている、ソニー C-38B
〈写真:光明興業ブログより 一部加工〉

【編集】
‣順序は、収録→粗編集(妙な間や「えーっと」等の消去、話の順序の入れ替え、脱線した話題のカット、大まかな時間調整)→整音(ノイズ消し・ノーマライズ等)→ダビング(SE・BGM・エフェクト追加、時間調整、CM追加)→完パケ(完成品)。

‣ラジオ局では、編集にかける時間は収録時間の8倍と言われている。
30分番組の場合はカットされるのを考慮して30分以上録音するので、まず実尺(CM・楽曲などを除く、実質的な放送時間)の20〜25分程度に粗編集。この作業に1〜2時間程度かかる。そして放送時間の微調整・曲やBGM付け・エフェクト付けをし、この作業も1〜2時間かかる。
最後に編集漏れ確認のため、検聴(通しで聴いてチェック)を行う。(実際は手抜きして、2倍速で聞いてるとのこと)。
手慣れてくると、生放送と同じように一発録り・無加工で作ることができる。

‣タイトルコール等は、エコー(正式名称 リバーブ)をかけるのが定番。
リバーブは、浅めにするくらいがちょうどいい。
そもそもリバーブとエコーは仕組みも音も別物なのに、なぜかエコーと呼ばれる。

‣パソコンのファン音は意外と気になる。
ノイズ消し作業を頑張るよりも、うっすらとBGMをかけて隠すほうが気にならない。

‣響きのある部屋では、中域(500Hz〜1kあたり)を下げたV字、デッドな部屋は中域を上げた逆V字にしてやると聞きやすくなる。

‣ダイナミックレンジが広い(音の大小が激しい)と聞きづらいので、コンプレッサやノーマライズを使って音圧を調整する。

‣音量は、Radikoだと平均 -6dB、最大 -3dBが目安。
なおスマホゲームをやりながら聞いたり、騒々しい屋外でイヤホンを使って聞いてるときでも、これぐらいの音量がちょうどいい感じ。
なお放送休止時に聞こえてくる、1kHz基準信号(ポー!という音)はRadikoだと -9dBくらい。

‣ダイナミックレンジの推奨範囲は、VU計を目安にすると「通常のアナウンスコメント(-7~0VU)、ささやきなどの小声(-10~-5VU)、スポーツ実況などの絶叫(-2~+2VU)。ただし+3VUを上回る大音量は視聴者に不快感を与えるため要注意。」(民放連「テレビCM素材搬入基準」より)

‣音圧の調整は、整音時と完パケ前に行う。

‣CM・本編は区切りを分かりやすくするため、尻に0.5秒以上の無音を入れるのが原則だが、ラジオ番組を実測してみるとほぼ無音がないことも多い。
某ラジオ局では、コーナーの区切りは1秒間の無音、交通情報・時報・箱番組前後なら3秒間の無音が目安となっているようだ。
なおラジオでは無音が続くとリスナーが不審に思うので、無音5秒以上で始末書、無音15秒以上で放送事故(エマージェンシーテープが作動)というルールになっている。トークに不慣れな場合は、BGMをかけることで無音を避けるという方法もある。

‣フェードイン・フェードアウトは、3秒間が目安。

‣編集は化粧と同じで、下地のベースメイク(整音 ノイズ消し等)が肝心。
これをおろそかにすると、仕上げのメイク(エフェクト ノーマライズ・エコー等)に苦労する。

‣カット変わりで環境ノイズがつながらないときは、環境ノイズをミックスしたり、短時間のフェードイン・フェードアウトを重ねてごまかす。

‣音圧を上げ過ぎると、波形が海苔(のような四角)になる。フィッシュボーン(波形がハッキリわかる状態)が理想。

‣ステレオで配信する場合、リスナーには右チャンネルの音が聞こえないことがあるので、音を左右に振りすぎない。
(左チャンネルの音声だけを再生してモノラル再生の代わりにする手抜き設計の機器や、モノラルスピーカー2台を設置する代わりに左右のスピーカーを遠い別々の場所に設置する施設も多い)

‣番組の冒頭や最後に1秒以上の無音をつくっておくと、リスナーにやさしい。
Bluetoothレシーバーには節電機能があるため、冒頭に1秒未満の途切れが発生することがある。

【配信】
‣FMラジオの音声周波数帯域は50Hz〜15kHzということを考慮すると、mp3のエンコード設定は、モノラル 32kHz 65〜105kbps VBRで充分。
(標本化定理より、音の上限15kHz×2=サンプリングレート30kHz デジタル的にきりのいい数に直して32kHz)
音楽みたいにサンプリングレートを44.1kHzにしたりすると、ファイルサイズの無駄。

‣サンプリングレート・ビットレートの選定に迷ったら、利用者が多いiPhone純正イヤホンや、売れ筋のそこそこ良いイヤホン(¥3,000前後のもの)を使って音質を確認してみるとよい。
ハイレゾ対応の高価なオーディオ機器で聞いている人はまれなので、配信時の音質は追求しすぎない。

‣ファイルサイズは、1分あたり1MB以下が目安。
サーバの転送量制限を考えると、音質を犠牲にしてでもファイルサイズを小さくして配信した方がよい。
中には1分あたり0.5MBなのに、聞きやすい音のPodcastもある。

‣中堅のPodcastだと、配信用サーバに「エックスサーバー」・「さくらのVPS」を使うことが多いが、転送量制限・負荷の問題から1万円/月 程度のプランを選択することになる。
もっと人気になると、転送量制限や配信開始時のアクセス集中に悩まされることになる。
お手軽にやるなら、Podcast対応のSeesaaブログ(5GBまで無料、¥300/月で無制限) で配信する人も多い。英語だがSoundcloud(3時間まで無料、$15/月で無制限)を使ったり、海外のPodcast配信サービスを使う人もいる。
大手プロバイダのホームページサービス(¥0~500/月)を、mp3ファイル置き場にするなんて方法もある。

【運営】
‣Podcastを始めるときは勢いだけでなんとかなるけど、やり続けるにはモチベーションを維持する必要がある。
またやり続けていると中だるみの時期が来たり、メンバーの集まりが悪くなってスケジュール調整がうまくいかなくなることもあるが、そんな時ほど初心に戻ってなぜPodcastを始めようと思ったのかを考えてみるとよい。

‣一度配信を休むと休み癖がついて、いつのまにか自然消滅していたり、夏休みと年末の2回しか配信しないPodcastも多い。
ただ不定期配信でも長くつづいているPodcastもあるので、とにかく続けることが肝心。

‣リスナーからの投稿はあてにできないが、かといって粗末に扱ってはいけない。
ラジオ局では、リスナーが100人いるとすると、その中で投稿してくれるリスナーはたったの1人と言われている。
なぜ投稿が来ないのかというと、どんな内容の投稿を募集しているのかをはっきり示していない、最近番組で投稿が紹介されていない、投稿に対する回答・リアクションが雑すぎるなどの理由があげられる。

‣ラジオの良さはリスナーとの距離が近く、ながら聞きができること。
そこを土足で踏み荒らすようなことをすると、リスナーに嫌われる。

‣初めて聞くリスナーが居ることを意識し、いつもと同じだからと言ってお約束や必要事項を省略したり、番組の身内ネタを多用しない。
特にそこそこ歴史が長いラジオ番組は、一見さんお断り状態になっていることに気づかずに、新規リスナーが入ってこないことを嘆いていることが多い。

‣収益化は期待しない。
Podcastの収益化を試みる人は多いが、うまくいっても収支はトントン。黒字化は無理だと悟り、Podcastの世界から去ってゆく人が多い。
有料Podcastにすると超ヘビーリスナーしかついてこないし、時間の経過とともに契約者は減る一方で、新規リスナーは増えないのが実情。

‣オリジナルグッズ販売や、公開録音などのイベントの開催の検討は慎重に。
熱狂的な人気がない限りはやめておいた方がいい。
[ 秋野よう | この記事のURL ]