今年の4月改変から、NHKには視聴者に媚びるような番組が多く見受けられるようになってしまいました。
おそらく、NHKバッシングの影響でしょう。
概して、マスメディアが行う同業他社への批判・議論は、冷静さを失いがちです。
我が家では、読売新聞と日本経済新聞を購読しているのですが、こんなことがよく見受けられます。
たとえば日本経済新聞社の社員が何らかの不祥事を起こしたとすると、通常なら数行で済む内容でも、読売新聞は十数行にしたり、わざわざ見出しをつけて掲載したりします。
まるで鬼の首を取ったかのよう。
日経の場合は同様なことがあった場合、控えめにはします(読者層を考慮したからか?)が、通常より大きめの記事にしています。
なお読売に関しては、直接競合している 朝日・毎日新聞が不祥事を起こした場合、日経の場合よりも紙面を大きく割いて、大々的に批難しています。
マスメディアに携わるものとしてのモラルを問うという行為は別に構いません。
ですが先のNHKバッシングは、NHKは民放のことを批判できないことをいいことに、NHKの弱みである世論を、民放が扇動しながら、NHKを批判するのは卑怯ではないでしょうか。
「NHKなんていらない」と言っていた文化人(?)も多かったのですが、NHKが日本の放送業界にどれだけ貢献しているのか理解しているんでしょうか。
まず、オリンピックの放映権はジャパンコンソーシアム(民放とNHKで作る共同放送機構)が購入しているのですが、放映権料の負担割合をご存知でしょうか?
アテネオリンピックの場合、民放2.5割、NHK7.5割です。
民放テレビ局(キー局)5局&AMラジオ3局(TBSラジオ(JRN系)・ニッポン放送&文化放送(NRN系))合計で2.5割なのに対して、NHK1局で7.5割なのです。
全国放送であることや、地上波テレビ・衛星放送・AM・FM等 複数のチャンネルを持っていることを考慮しても過剰な負担額です。
アテネオリンピックの日本の放映権料は約169億円だったので、NHKの負担額は約127億円ということになりますが、NHK負担分は「受信料」でまかなっています。
またビデオリサーチ(関東地区)のデータによると、台風が直撃したり大雪等があった日に、ニュース番組のジャンルで必ず視聴率1位に躍り出るのは「首都圏ニュース8・45」(ローカルニュース枠 総合テレビ 20:45〜21:00)です。
しかも、毎回バラエティ番組に負けず劣らずの視聴率を叩き出しています。
いかにNHKが頼りにされているかが良く分かります。
またNHKの研究機関であるNHK放送技術研究所は、放送に関する研究では国内最大規模です。
その研究成果は、結実は遅いものの、ハイビジョン放送や衛星放送・バーチャルセット(リアルタイムでCGと人物を合成して仮想スタジオを作る技術 現在は天気予報などで多用されている)等に生かされています。
NHKは巨大な組織であるがゆえに融通が効かなかったり、問題のある職員がいたりするのも事実です。
しかしプロジェクトXブーム初期に出された関連本の中で「プロジェクトX」のプロデューサーが、「視聴率では(裏番組に)勝てないので、質で勝負しよう」と言って制作したと語っていました。
こういう発言が内部の人間から出てくる通り、元々NHKの潜在能力は高いのです。
(番組開始当初の2・3ヶ月はクオリティが非常に高かったが、それが継続できなかったのは残念)
私は、一連のバッシング騒動の大きな原因は、NHK自身のPR不足が原因だと考えています。
自分たちの潜在能力の高さを過信して、いい番組を作れば視聴者もわかってくれると思い込みすぎたのです。
巨視的に見ると、一般大衆はおバカなのですから、ごく一部の違いが分かる人に向けて番組を作っても駄目なのです。
ある程度は譲歩することも必要です。
だからといって視聴者に媚びるのではなく、現代にあわせて柔軟に対応してメリハリをつけた番組作りをしてほしいと思います。
がんばれ、NHK!