きゃらりこ日誌

2021年06月

メモ帳・ワードパッド・Microsoft Wordの生い立ち

PC・家電 / 技術
Windowsには、文章作成のためのソフトが3つあります。

‣ メモ帳
 Windowsに付属している、シンプルなテキストエディタです。シンプルがゆえに、文字の拡大縮小や太字・着色などの装飾はできません。
‣ ワードパッド
 Windowsに付属している、簡易なワープロソフトです。簡易なソフトなので、文字の修飾や画像の埋め込みなどの装飾機能は、Rich Text Froamtで表現できる範囲内に限られます。
‣ Microsoft Word
 Microsoft Offceを構成するソフトの一つで、高機能なワープロソフトです。有料ソフトですが、ビジネスには必須の世界標準ソフトなので、最初からMicrosoft Offceがインストールされているパソコンも販売されています。そのため文章作成と言ったら真っ先にこれを思い浮かべる人も多いです。もともとは英文ワープロとして作られたため、日本特有の罫線の使い方や、日本語の組版については不得手な部分があります。

このあたりの話はよく見聞きする話なのでこれぐらいにして、さらに深堀りし各ソフトの出自を紹介します。

歴史


その前に、これらのソフトが登場した当時のことを簡単に説明しておきましょう。
時代は、Windows登場以前の1970年代から、日本でWindowsの普及期が始まった1990年代中盤の間のお話です。

まず1970年代中盤に、海外のマニアの間でパソコン(当時は、マイコンと呼ばれていた)が流行し始め、この流れでマイクロソフトはソフトウェアメーカーとして、Appleはパソコンメーカーとして創業されました。
1980年代になると、各社からさまざまなCPU・仕様のパソコンが発売されるようになり、マニアの趣味だけでなくビジネスでも活用されるようになりました。
1979年には日本電気からPC-8801が発売され、のちにこの後継のPC-9800シリーズが、Windowsが動くPC/AT互換機(DOS/V機)の普及が始まる1990年代中盤まで日本で圧倒的なシェアを握りました。

一方、創業当時のマイクロソフトは、各社のパソコン向けのソフトウエアを開発するベンチャー企業でした。
たとえば創業時にリリースされたプログラミング言語 Microsoft BASIC、およびその派生BASICは、様々なメーカーのパソコンに採用されました。
また1982年にはWindowsの前身ともいえるMS-DOSをリリースし、日本のPC-9800シリーズを含め、各社のパソコンで使用されるようになりました。
1980年には初のハードウェア製品として、Appleのパソコン Apple II用の拡張カード「Z-80 SoftCard」を発売しました。
1983年5月には、現在も開発・販売が続けられているマイクロソフトマウスを発売しました。
そしてMS-DOSの成功を足掛かりにして、1985年にWindows 1.0がリリースされました。
1995年11月には日本でWindows 95が発売され、これ以降日本でもWindowsの普及が進んでいくことになります。

MSX-BASICの画面
Microsoft BASIC派生のMSX-BASIC

メモ帳

まず前述のソフトの中で一番歴史が古いのは、テキストエディタの「メモ帳」です。
Windowsがリリースされる2年前の1983年7月に、マイクロソフトマウス付属のMS-DOS用ソフト「Multi-Tool Notepad」としてリリースされました。
MS-DOS付属の単機能なラインエディタ EDLINを、スクリーンエディタ化してマウスに対応させたようなソフトです。
当時、マウスはまだ一般にはほとんど知られておらず、マウス対応ソフトも少なかったため、マウス活用のためのサンプルソフトとして作成されました。
1985年11月にWindows 1.0がリリースされた際にWindowsの付属ソフトになり、Windowsのバージョンアップとともに機能強化を施されて現在に至ります。
なおオリジナルの英語版では「Notepad」ですが、日本語版では「メモ帳」の名称になっています。

Windows Millennium Edition版のMicrosoft メモ帳の画面
Microsoft メモ帳(Windows Millennium Edition版)
Microsoft Windows for Workgroups Version3.11版のNotepadの画面
Notepad(Microsoft Windows for Workgroups Version3.11版)

Microsoft Word

次に古いのが、ワープロソフトの「Microsoft Word」です。
前述のメモ帳のリリースの2か月後の、1983年10月に「Multi-Tool Word」の名称でXENIX, MS-DOS用向けの英文ワープロソフトとしてリリースされました。
なおWindows版は、Windows 3.0のリリースに先立ち、1989年11月にリリースされました。
過去にはAtari ST版、現在ではMac, iOS, Android版や、Office Online, Microsoft 365などのウェブ版もリリースされています。

Word for Microsoft 365の画面
Word for Microsoft 365
Microsoft Office Word 2007の画面
Microsoft Office Word 2007
Microsoft Word 5.5 for DOSの画面
Microsoft Word 5.5 for DOS
画像出典:WinWorld: Microsoft Word 5.x (DOS and OS/2) (一部改変)

Windows Write

そして忘れられがちなのですが、過去には「Windows Write」という簡易ワープロソフトもありました。
あまり聞き馴染みがないのですが、それもそのはず。
1985年11月リリースのWindows 1.0からWindows NT 3.51までの間、Windowsに付属していたソフトです。
Windowsが日本で本格的に普及したのはWindows 95以降なので、あまり知られていないのも無理はありません。
過去には、AtariST版やMac版もリリースされていました。
ただWindows 95で、ワードパッドにとって代わられてしまいました。
しかしWindows 10になった現在でも、互換性維持のために C:\WINDOWS\system32\に、Windows Writeの名残 write.exeが存在しており、これを実行するとワードパッドが起動します。

Microsoft Windows for Workgroups Version3.11版のWindows Writeの画面
Windows Write(Microsoft Windows for Workgroups Version3.11版)

ワードパッド

一番新しいのは、簡易ワープロソフトの「ワードパッド」です。
前述のMicrosoft Writeを置き換える形で、1990年5月リリースのWindows 3.0の付属ソフトとして登場しました。
実は、Microsoft C/C++のMicrosoft Foundation Class(MFC)の、活用例として作られたソフトです。
そのため、ワードパッドのソースコードは公開されています。
なおWindows 3.x系(Windows 95・98・98 SE・Me)以前のメモ帳では、Windowsのウィンドウクラスの制限により64KB以上のファイルは開けないため、代替としてワードパッドが使われていました。

Microsoft ワードパッド Version 5.1の画面
Microsoft ワードパッド Version 5.1(Windows XP SP3版)

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